MOLT  ›  記事  ›  #022 — AWE
INTERVIEW

屋久島の雨は、濡れるというより「混ざる」。

縄文杉まで行かなくてもよかった。白谷雲水峡の途中、苔の上で雨に打たれた美容師(28)が体験した、輪郭の消える時間。

TEXT: 語り手:美容師・28 ILLUSTRATION: 線画置き場 ◷ 読了 約3分 2026.07.07
moss, rain, and no edges
苔の上。どこまでが自分で、どこからが森か、という問題。

「傘は3分で畳みました。意味がないので」。屋久島は月に35日雨が降ると言われる島である。美容師の彼女が体験したのは、白谷雲水峡の途中、予定が全部流れた日の午後だった。

01

ザックの中まで浸水した日

「最初は最悪って思ってたんです。レインウェアの中まで濡れて、ザックの中も浸水して。でも苔の上に座って、諦めて打たれてたら、途中から気持ちよくなってきて。雨と汗と川の音の区別がつかなくなって、どこまでが自分でどこからが森か、分からなくなったんです」

濡れるというより、混ざる。
あれはたぶん、輪郭がふやける感覚。
02

帰ってから、変わったこと

「東京に戻って、雨の日が嫌いじゃなくなりました。ビルの雨は森の雨の親戚だと思うと、ちょっと許せる。あと、お客さんの髪を洗うとき、たまにあの森を思い出します」。畏敬の念は、シャンプー台にも出張してくるらしい。

— fin —
語り手:美容師・28月に7万円分の雨具を売る側の人。自分が濡れるのは屋久島だけと決めている。
NEXT ARTICLE

終電を逃した夜の、コンビニ前の集合写真。 →